[ 美術・映画・音楽 ]

【バンジョーンズ 海のニンフ】
あまり暑いので涼しくなるお話です。
ギリシャ神話には上半身人間で下半身が動物の生物がいくつも登場します。
その中でも海に住むセイレーンは、人魚の原型ともいわれる魅惑的存在です。
ファム・ファタルー妖婦伝から紹介します。
青文字・紫文字は引用。
![]() | ファム・ファタル――妖婦論樋口容子 by G-Tools |
ホメロスの長編叙事詩「オデッセイア」では、魔法使いキルケが帰郷の道を急ぐオデッセウスに忠告します。
あなたはセイレーンの島を避けて通ることはできません。彼女たちの歌を聴いた人は誰もが魂を奪われることでしょう。
セイレーン姉妹は草むらに座って甘い声であなたを呼びますが、その川べりは死の影に覆われたまま、死体の骨と肉で腐りつつあります。
立ち止まらずに島を通り過ぎなければなりません。蜜蝋を練って、こぎ手の耳をしっかりと塞ぎなさい。誰もその歌を聴かないようにするためです。
あなたが心からその歌を聴きたければ、体をマストにしっかりと縛りつけておかなければなりません。
キルケの忠告どおりにして、島を通り過ぎるとき、魂を奪われるほど美しい歌声が聞こえてきました。オデッセウスは、これほどまでに甘美で透明で神秘的な声を聞いたことがありませんでした。彼は乗組員に、縄をほどけと命じましたが、部下ははじめの指示通りに彼をさらにしっかりと縛り付け、彼らは死の危険から逃れることができたのです。

【ウォーターハウス ユリシーズとセイレーン】
ウォーターハウスは、この劇的な瞬間を誰よりもリアルに描きました。
美しい女の顔に翼を持つ怪物が、男の心を惑わす天上の歌を歌うや、魂を奪われたオデッセウスはセイレーンの誘惑に負け、縄をほどこうと身もだえしています。
この不思議な海の生命体の最も強力な武器は、人の心の琴線に触れる「歌」なのです。
中世に入ると、セイレーンは美しい女の姿に魚の尾を持つ姿に変わります。
8世紀の修道士エルドヘルムはこう書いています。
セイレーンは愛らしい体つきと甘い声で船員を誘惑する海の娘だ。頭からへそまでは少女にかわりはないが、鱗で覆われた尾がついており、波の中にすばやく身を隠すことができる。
また、12世紀のマルボード司教は「娼婦について」という詩で書いています。
悪魔が投げよこした最後の餌食は女だ。その女こそセイレーンだ。
13世紀のイギリス人バーセルミは自分の百科事典でこう書いています。
セイレーンは男を眠くさせて、自分のそばに連れてきて、同衾することを強要したのち、拒否すると彼を殺し、その肉を貪る妖怪だ。
これらの文献は、セイレーンは男を誘惑し、男たちは淫蕩な女によって地獄に落とされた犠牲者だという事実を強調しているのです。
人魚のイメージは多くの芸術家の創作意欲を刺激して、たくさんの官能的な作品がうまれました。

最も美しい人魚の絵といわれています。
【ウォーターハウス マーメイド 1905】
潮の香りがただよう海辺で、美しい人魚が海風に吹かれながらゆらめく金髪を梳いています。まばゆい金髪と透明な乳白色の肌、下半身を覆うみずみずしい魚の尾ひれが何とも言えず官能的です。

【マグリット 集合的発明 1935】
シュールレアリスムの画家マグリットは、あえて固定観念を破るため、上半身を魚、下半身を女性として描きました。これでは誰も近づかないでしょうね。
セイレーンの歌に惑わされた瞬間、男は自分の全てを捨てて彼女に従い、海に身を投げる。波風が吹き荒れる人生の海を航海しようとする男は、耳に蜜蝋を詰め、マストに自分をしっかりと縛り、セイレーンの誘惑に打ち勝たねばならない。
著者のイ・ミョンオク女史にかかると、どんな美しい絵も男たちの女性への呪いと憧れの現れのようです。
きれいな女は欲しいけど、溺れるとこわいよ〜
と言っているようですね。
そして、人魚はアンデルセンの童話「人魚姫」によって人々の人気者になりました。

☆美しいものに対するおそれとあこがれが神話の中に息づいています。☆
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私はなぜか、幼稚園の頃から人魚になりたくて、なりたくてしかたありませんでした。
お母さんになりたいとよくダダをこねました。
なんというか、艶めかしく、妖艶でそれでいて、どこか儚げで、言葉にしづらい何かを感じています。
最近、またこの気持ちが出て来て、人魚のように、
海に入って泳ぎたい気持ちです。